メディアが取り上げない難民コミュニティの姿

Published
2025年07月10日

メディアの多様化が進んだ今日でも、「難民」についてのニュースが報じられるときには「恐怖」や「危機」という表現が繰り返され、画一的に語られる傾向があります。 

そして、難民一人ひとりが持つ力やスキル、知識は取り上げられることがほとんどありません。 

問題は、伝えられる内容だけではありません。どのような表現で語られ、誰がその声を発しているのかも重要です。 

メディアはその時々の危機に焦点を当てがちです。世界が直面する喫緊の問題は取り上げても、難民コミュニティが抱える長期的で広範な課題にはなかなか光が当たりません。メディアの報道は、人々の心に難民に対する特定のイメージを作り上げ、ときに恐怖を煽る結果を招きます。こうした報道によって、難民に対する誤解が深まり、避難を余儀なくされた人々の状況が本来持つ複雑さが見えにくくなっています。特にメディアは、移民と難民をひとくくりにすることが多いのですが、移民は自らの意思で母国を離れる一方で、難民にはその選択肢がありません。 

REIは、難民一人ひとりの物語がすべて異なり、決して一括りにできるものではないと確信しています。彼らの物語は、それぞれの歴史や文化、夢、そして強みを反映しているのです。 

しかし、メディアの中では、難民は複雑な個人としての姿を奪われ、数字や統計、政策の言葉の中に埋もれてしまいます。人としての顔が見えなくなり、声が届かず、人間性さえ奪われているのです。政策論争や政府の発言、衝撃的な映像ばかりが取り上げられ、最も大切な当事者である難民自身の声はほとんど聞こえてきません。ニュースでは難民について「語られる」ことはあっても、彼ら自身が「語る」場面はほとんどないのが現状です。 

REIは、実際の現場の姿はこうした報道とは大きく異なることを知っています。そして私たちは、難民自身が自らの物語を語り、メディアが描きがちな固定観念を打ち破っていくことを目指しています。教育、法律、コミュニティ活動、ソーシャルワーク、エンパワーメントといったさまざまな分野に根ざしたプロジェクトを通じて、難民自身が自分たちの未来を切り拓くリーダーとなり、メディアによって作られた「受け身の存在」というイメージを覆していきます。 

メディアは、難民自身の物語にもっと耳を傾け、有害なステレオタイプや一括りの報道を避けるべきです。そして私たちも、メディアの製作者であり、また消費者として、難民という現実を生きる人々こそが自らの声で語り、物語を発信していることを確認するべきです。それによって、難民に対する支援のあり方だけでなく、社会が彼らをどう見ていくかという視点も変わっていくはずです。