レバノン在住シリア避難民のための幼稚園

Published
2020年08月27日

プロジェクト内容

レバノン南部ワディザインにある幼稚園では、100名の園児の受け入れが可能です。この幼稚園では、社会への適応学習も含む重要な幼児教育を子どもたちへ提供しています。

カリキュラムは、4歳から6歳の子どもたち向けの教育で、社会生活を学ぶためのアクテビティなどが含まれた内容です。子どもたちは数字を学んだり、チームを組んでのゲームや、美術工作などの活動に参加します。精神的にトラウマを抱えていたり、不安な生活環境で過ごしてきた子どもたちにとって、仲間とのゲームは特に重要です。この活動を通してチームワークや他者との信頼関係、自制や共有を学習します。加えてこのプロジェクトでは、幼稚園の先生もまた避難民であり、多くの教育従事者に生活の糧と、職務の技術を発揮する稀な機会を提供しています。

この幼稚園の先生たちは、少ない手持ちの資源のなかから子どもたちのためにさまざまな物を作りあげます。私たちが普段何気なく消費している紙コップや紙皿から子どもたちが喜ぶ動物、海の生き物、雪だるままで作り上げて、その創作の精神には驚くばかりです。

長期的な支援成果

この幼稚園は、いずれ避難民受け入れ社会であるレバノンの学校制度へ編入していく子どもたちにとっての教育準備施設となります。

教育制度の異なる故郷から、新しい社会に無理なくとけこめるよう、ここでその準備の学習ができるのです。

基金使途

基金は、教師、補助教員への報酬、教室の勉強用机などの備品類をまかなうために使われます。現在では、通園と自宅からのオンラインとに受講の方法を分けています。

支援成果事例

イスラーナウファルはシリアからやってきた女の子で絵を描くことが大好き。本やカバンなど自分の持ち物にはなんでも絵を描きます。入園当初5歳だったイスラーは、最初幼稚園に来ることが好きではなく、よく泣いて、友だちや先生とも話をしない子どもでした。学校の本や机に絵を描いてしまうイスラーに、先生は彼女の母親と協力して身の回りの整頓の大切さを教え、家でお絵描きの黒板を与えられて絵を描く楽しむことを学んだイスラーは、園内での落書きをしなくなりました。やがてイスラーは文字や数字を習い、練習帳を使いこなし、整頓も上手になり、幼稚園へ通うことが好きになりました。

現地の状況

レバノンでは人口の4分の1を占める100万人がシリア避難民という状況下で、元来の不安定な国状に加え、避難民のうち40万人は子どもたちであり、レバノンの学校制度は大きな負担を背負っています。就学年齢の子どもたちのうち、およそ30%のみが教育を受ける機会を与えられていると推計されています。避難民の子どもたちにとって受け入れ先社会で生じるさまざまな困難に加え、大きな課題は使用言語の違いです。シリアの学校ではアラビア語が学校での使用言語なのに対し、レバノンでは英語とフランス語が公立学校の使用言語となっています。

幼稚園はNPO団体PARDから用地を提供され、運営管理は同団体のスタッフによって行われています。