現地訪問の振り返り:REIが支援する難民プロジェクト

Published
2026年04月28日

2026年3月、タイ・ミャンマー国境。REIの現地訪問に参加する前、私は現地の状況を理解しているつもりでした。資金難、複雑な政治情勢、そして避難生活の危うさ。しかし、実際に現地に降り立ち、キャンプを歩き、人々と対面してその「困難」と「強さ」を肌で感じる経験は、想像を絶するものでした。

  • 時に心を揺さぶられ、時に不安に駆られ、それでいて不思議と活力を与えられる――そんな忘れられない旅となったのです。

今回の訪問で、私の心に深く刻まれたのは次の3点です。

  • 文化を誇り、アイデンティティを守り抜く人々の尊厳
  • 未来を自らの手で築こうとする若者たちの勇気
  • 依存症を乗り越え、人生を再生させようとする人々の静かなレジリエンス

カレンニー・ソーシャル・デベロップメント・センター(KSDC)|メー・ホン・ソン

最初に訪れたKSDCで何より圧倒されたのは、学生たちの「学び」に対する並々ならぬ熱意です。 驚いたことに、多くの学生が「最も好きな科目」に「法の支配(Rule of Law)」を挙げていました。ティモさんという若い女性は、「あなたの国では正義はどう守られているのか」と、食い入るように私に尋ねてきました。彼女たちの関心は机上の空論ではなく、公正さや説明責任が機能していない現実をどう変えるかという、切実な問いに根ざしていたのです。

KSDCはこれまでに750人の活動家を輩出してきました。現在在籍する86人の学生は、その多くが女性です。これは、男性の多くが前線での戦闘や避難を余儀なくされている現実の裏返しでもあります。
伝統の織物を身にまとった学生たちが披露してくれたダンスは、喜びに満ちていながら、どこか哀切を帯びていました。避難生活という過酷な状況下でも、彼らの誇りは決して揺らぐことはありません。

  • 伝統の織物を身にまとった学生たちが披露してくれたダンスは、喜びに満ちていながら、どこか哀切を帯びていました。避難生活という過酷な状況下でも、彼らの誇りは決して揺らぐことはありません。

カレン女性組織(KWO)|メー・サリアン

次に訪れたKWOは、コミュニティに命を懸ける女性たちが率いる組織です。リーダーのクニャウ・パウさんは、アメリカ移住の機会を辞退し、あえてこの地に留まって同胞を導く道を選んだといいます。

REIが支援する「ベビーキット配布プロジェクト」では、昨年だけで965セットが配布されました。おむつや石けん、爪切りといった、私たちにとっては当たり前の物資が、ここでは「命をつなぐ必需品」となります。特に素晴らしいのは、単に物資を配るだけでなく、衛生や育児の講習もで行っている点です。 

  • 特に素晴らしいのは、単に物資を配るだけでなく、衛生や育児の講習もで行っている点です。 しかし、支援の現場は常に危険と隣り合わせです。

燃料高騰や移動のリスクにさらされながら、スタッフは文字通り命がけで活動しています。「小規模な支援」という言葉では片付けられない、家族の命を守るための最前線を目の当たりにしました。

薬物依存リハビリテーションセンター(DARE)|メー・ラ難民キャンプ

最後に訪れたのは、トラウマや搾取から逃れるために薬物やアルコールに依存してしまった人々のためのセンターです。ミャンマー軍が、人々を陥れるために薬物をキャンディに模して配布しているという話には、言葉を失いました。

  • 特筆すべきは、ここのスタッフの多くが「元利用者」であることです。

2度の再発を経て現在はプログラムを率いるアー・レー氏や、重度の依存から回復し、今はボランティアとして他者を支えるソー・グリーン氏。彼らの存在そのものが、新たな利用者の希望となっています。 DAREの女性用居住区で、竹の床に座って話を聞いた時間は、最も感情が溢れる瞬間でした。DVをきっかけに酒に溺れた女性、6人の子を抱えながら依存に苦しんだ女性。

  • 彼女たちは微笑みながら、こう語ってくれました。 「ここでの治療が、もう一度生きるチャンスをくれたんです」

視察を終えて:支援がもたらす「連鎖」

REIのアプローチは、一つの支援が次の支援を生む「波及効果」を生み出しています。回復した人が他者を支え、知識を得た母親が家族を守り、学んだ若者がリーダーへと育っていく。

もちろん、衛生環境の悪化や資金不足など、構造的な課題は山積みです。それでもなお、人々は耐え抜き、前を向いています。 最も印象に残った言葉があります。「私たちの置かれている状況は無力です。でも、だからといって、自分にできることをしない理由にはならない」

ミャンマーの悲劇は、今や世界のニュースから消えつつあります。しかし、国境地帯では今日も、学生は学び、母親は子を育て、回復した人々は支え合っています。そこには、欠乏の中にあっても「自ら選択する」という強い意志がありました。 彼らの尊厳を守り、主体性を支えるREIの活動は、これまで以上に重要になっています。この歩みを止めないために、私たちはより長く、深い関わりを続けていかなければなりません。

マリー=クレール・ジョイス